Apple、「iPhone13」4機種発表 カメラ機能を向上
【シリコンバレー=奥平和行】米アップルは14日、スマートフォン「iPhone」の新機種を発表した。新開発の半導体などにより動画の撮影機能を高めた。最低価格を699ドル(約7万7000円)とするなど価格は据え置く一方、主力機種で記録媒体の容量を増やす。収益を支えるスマホで基本性能を着実に高め、買い替え需要を取り込む。
日本は8万6800円から、24日発売
主力機種で6.1型の画面を搭載した「iPhone13」(799ドルから)と5.4型の「13 mini」(699ドルから)を発売する。日本での最低価格は13が9万8800円、13 miniが8万6800円となる。
また、上位機種も刷新し、「13 Pro」(999ドルから、日本は12万2800円から)と「13 Pro Max」(1099ドルから、日本は13万4800円から)を売り出す。いずれも米国や日本などで17日に受注を始め、24日に発売する。
前面はカメラを内蔵した部分の面積を従来よりも20%狭め、利用可能な領域を広げた。さらに独自開発した回路線幅が5ナノ(ナノは10億分の1)メートルの半導体「A15」を採用し、処理能力を高めた。アップル幹部は説明会で「他社は2年前の当社の半導体に追いつこうとしている」と述べて先進性を強調した。
カメラ進化、「映画風」動画撮影も
背面には13と13 miniでは2つ、ProとPro Maxは3つのカメラを搭載する。いずれも取り込むことができる光の量を増やすなどして暗い場所でも鮮明な撮影を可能にしたほか、13と13 miniには上位機種にしか搭載していなかった「センサーシフト式」と呼ぶ光学式手ぶれ補正機能を加えた。
改良した半導体とカメラを組み合わせることにより、動画の撮影機能も向上させる。「シネマティックモード」と呼ぶ機能を新たに搭載した。中心となる被写体にピントを合わせたり、被写体となる人物が視線を向けた先にフォーカスを合わせてほかの部分をぼかしたりするといった処理を自動化し、動画の表現力を高めるという。
電池の容量を増やしたほか、半導体の性能向上などにより1回の充電で利用できる時間を延ばした。13は従来よりも2時間半、13 miniも1時間半長く使える。両機種は最も安い製品の記録媒体の容量を64ギガ(ギガは10億)バイトから128ギガバイトに倍増させ、高精細な動画などの保存を増やしている消費者のニーズに応える。
高速通信規格「5G」への対応も増やす。説明会で幹部は年末までに対応を倍増させ、60カ国・地域の200超の通信会社にまで広げると説明した。各地の通信会社は5G通信網の拡大を急いでおり、アップルとしても対応を強化することで通信会社の買い替え支援策の恩恵を得られる。
発表後、株価は下落
アップルの2021年4~6月期のiPhoneの売上高は前年同期比50%増の395億7000万ドルだった。同社は音楽配信やアプリ配信などサービス事業を拡大しているものの、iPhoneは売上高のほぼ半分を占める主力商品だ。iPhoneはサービスなどの基盤としての役割も果たしており、足元の収益や事業の成長に果たす役割は依然として大きい。
同日にインターネットを通じて配信した説明会で、ティム・クック最高経営責任者(CEO)は「人々が愛用するiPhoneの性能をさらに高めて楽しくする」と述べた。
あわせて小型タブレット端末「iPad mini」の改良なども発表した一方、期待が高まっていたワイヤレスイヤホン「AirPods」の新製品や腕時計型端末「Apple Watch」で血圧を測定できる機能などの発表はなかった。14日の米株式市場でアップルの株価は前日比1%下落した。
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