ベネズエラ、通貨5ケタ切り下げへ ハイパーインフレ
【リマ=外山尚之】南米ベネズエラ政府は25日、ハイパーインフレに対応するため、通貨の単位を5ケタ切り下げるデノミ(通貨単位の切り下げ)を実施すると発表した。これまで3ケタを切り下げるとしてきたが、国際通貨基金(IMF)が同国の物価上昇率について年内にも100万%に達すると発表するなど上昇ペースが加速しており、対応しきれないと判断した。
マドゥロ大統領が経済再建策を発表する中で明らかにした。従来の計画では8月4日付で現在流通する1000ボリバルを新通貨1ボリバル・ソベラノに切り替えるとしてきたが、10万ボリバルを1ボリバル・ソベラノとする。実施日は8月20日に遅らせる。
ベネズエラ政府は紙幣の印刷を海外に委託しているが、外貨不足とインフレの加速で紙幣の供給が間に合わず、国民は現在、ほとんど現金を使っていない。そのため今回のデノミも金融システム上で新通貨とボリバルの交換レートを操作するだけで済むとみられる。
通貨の価値下落が止まらない中、マドゥロ氏は同国が2月に発行した仮想通貨「ペトロ」がボリバル・ソベラノの価値を支えると説明した。詳細は不明だが、世界最大級の埋蔵原油を価値の裏付けと対外的に説明するペトロと結びつけることで、通貨の信用力を高めたい考えとみられる。国営・民間問わず、同国で活動する全ての銀行に対し、この仕組みづくりについて協力するよう命じた。
ベネズエラでは外貨不足で生活に必要な物資を十分に輸入できず、足元では月2倍のペースで物価上昇が続いている。野党が多数派を占める議会の調査では6月時点でインフレ率は年約4万6000%だったが、IMFは年内にも100万%に達すると予想する。
ハイパーインフレ下でデノミはよく用いられる。IMFが現在のベネズエラと状況が似ていると評するアフリカのジンバブエでは、中央銀行が2009年に1兆ジンバブエドルを12ケタ切り下げ、1ジンバブエドルに切り替えた。