「ダウンサイドリスクを克服するレジリエンスと実践知の探究」第1回シンポジウム

  • 日程:
    2023年02月21日(火)
  • 時間:
    18:00-20:00 (JST)
  • 会場:
    Zoomウェビナーによるオンライン開催となります。
    ご登録完了後、会議前日に事務局より招待URLをお送りします。
  • 主催:

    東京大学未来ビジョン研究センター(IFI) SDGs協創研究ユニット

  • 共催:

    日本アフラシア学会 (JSAS)

  • 言語:

    英語 (日本語同時通訳あり)

    ※未来ビジョン研究センターと日本アフラシア学会(JSAS)は、本イベントのZoom URL情報を提供するため、また、今後の活動についての情報を提供するため皆様の個人情報を収集させていただいております。この情報はいかなる第三者にも開示いたしません。

定員に達したため申込みを締め切りました。
開催趣旨

東京大学未来ビジョン研究センター(IFI)SDGs協創研究ユニットと日本アフラシア学会(JSAS)は、日立感染症関連研究支援基金の助成による国際共同研究プロジェクト「ダウンサイドリスクを克服するレジリエンスと実践知の探究―新型コロナ危機下のアフリカにおける草の根の声―」を実施しています。本研究の目的は、アフリカにおいて新型コロナの感染拡大と各国政府による対応策の両方が人々にもたらすリスクとリスク認知の実態をとらえたうえで、人々が実践知を駆使してリスクを克服していく過程を明らかにし、政府機関や援助機関等による感染症対策に対する政策提言を行うことにあります。そのため、コンゴ民主共和国、ケニア、南アフリカ、タンザニア、ウガンダ、ジンバブエにおいて人々の草の根の声を集めて分析しています。
共同研究開始から丸1年を迎える今回のシンポジウムでは、データプラットフォームを活用して実施したオンライン調査およびケニアとジンバブエにおける現地調査をご報告します。

登壇者

趣旨説明: 華井和代 東京大学 特任講師

報告1:クリスチャン・オチア 名古屋大学 准教授
「アフリカにおけるCOVID-19のリスク認知:思想、価値観、性格特性」

報告2:レイバン・キティンジ・キニュア 上智大学 研究員
「COVID-19によるケニアの高等教育の混乱:閉鎖、疲労、回復への道筋」

報告3:ランガリライ・ムチェトゥ  サム・モヨ アフリカ農業研究所 研究員
「ジンバブウェにおけるCOVID-19の農業市場と生活への影響に関する農民の認識」

 

※本シンポジウムは日立感染症関連研究支援基金の助成によって開催しています

2023 年 2 月 21 日、東京大学未来ビジョン研究センターSDGs協創研究ユニットは日本アフラシア学会(JSAS)と連携し、「ダウンサイドリスクを克服するレジリエンスと実践知の探究―新型コロナ危機下のアフリカにおける草の根の声」を題とするシンポジウムを開催しました。

はじめに、司会の華井和代特任講師が本シンポジウムの概要を説明しました。本シンポジウムは、日立感染症関連研究支援基金の助成による国際共同研究プロジェクトの中間発表です。このプロジェクトは、COVID-19が引き起こす多様なリスクに巻き込まれているアフリカの人々がどのようなリスク認知をもち、実践知を駆使して克服してきたのかを明らかにし、政府機関や援助機関等による感染症対策に対する政策提言を行うことを目的としています。

本シンポジウムでは、研究メンバーであるクリスチャン・S・オチア准教授(名古屋大学)、レイバン・キティンジ・キニュア研究員(上智大学)、ランガリライ・ガビン・ムチェトゥ特別研究員(サム・モヨ・アフリカ農業研究所)がこれまでの研究成果を報告しました。

オチア准教授の報告では、アフリカ7カ国のサンプル調査により、政府のCOVID-19対策に伴う現実的なリスクと人々のリスク認知の分類と分析が行われました。なかでも、COVID-19のリスク認知と人々の内面的要因との相互関係が検証されました。調査結果によると、COVID-19へのリスク認知度はアフリカ7カ国のなかでもばらつきがあるものの、政治・経済などの他のリスクに比べて低い傾向が見られます。また、回答者の価値観、思想、性格特性、さらに政府機関や医療機関への信頼とリスク認知との関連性が高いことがわかりました。現地の複雑な文化的・認知的要因を十分に考慮することが、これから効果的な政策策定・実施にとって不可欠だと言えます。

キニュア研究員の発表では、COVID-19にともなう規制がケニアの高等教育に与えた影響に着目し、政府が短期間で教育手法をオンライン学習に切り替えようとしたことは、学生の生活と勉学にどのような変化をもたらしてきたのかを明らかにしました。現地調査の結果からみると、国家による支援、学生の新しいメディアへの適応力や、危機によって引き出された起業家精神が、COVID-19による負の影響を緩和しました。しかし、インフラ整備の格差、インターネット環境の不備と対人関係の欠如が、結果的に学生の試験対策、精神状態や就職の不確定性として跳ね返ってしまい、より大きなリスクのしわ寄せが社会の底辺におよぶ懸念があります。

最後の発表では、ムチェトゥ特別研究員がジンバブエの現地調査に基づき、農村地域におけるCOVID-19にともなうリスクの発生、人々のリスク認知と生存戦略の変化を明らかにしました。共同体地域・再定住地域・首都圏で実施された調査を通して、COVID-19の影響が社会的・経済的・政治的課題として顕在化していることが明らかになりました。なかでも、自由な移動を条件とする農村の生産・生活は、モノやサービスの移動の抑制・制約によって頓挫しました。公的サービスの欠如とそれに対する不信感は、人々を伝統的な信仰や知に向かわせています。COVID-19が危機とともに変革の機会をもたらしたことは、リスクの多重性を考える上で示唆に富みます。

質疑応答では、マスク着用率や宗教の影響など、アフリカの事情に関する詳細を確認するような質問が多く寄せられました。3人の発表者が描き出したアフリカにおける現実と人々の認知のダイナミックなせめぎ合いから、複雑系としてのリスクに向き合うためのヒントを見出すことを将来の課題とし、シンポジウムを終えました。

※本シンポジウムは日立感染症関連研究支援基金の助成によって開催いたしました。

=動画= Part1


=動画= Part2